旅の目的は主にアートです。

旅は日帰りも含みます。近くの美術館から遠くの美術館まで。観たいものは観たい!気ままな鑑賞日記です。

白井美穂 森の空き地 @府中市美術館  和紙がおりなす日本の美 @三鷹市美術ギャラリー 2024.2

白井美穂 森の空き地

このポスターの不思議な雰囲気に惹かれて府中市美術館へ。府中駅からバスでもいいけど、東府中駅からならちょっと遠いけど歩いても行けます。(もちろん東府中からのバスもあります)東府中から行く方が私の好みです。昨年の「江戸絵画お絵かき教室」以来。

5章からなるインスタレーションと映像作品。章解説、作品の解説もあってわかりやすい。そして、係の人も見逃さないように誘導してくれてとても快適に見られます。

前進と疲労

永い休息/立ち入り禁止

1階のロビーの作品は撮影可。建物、景色といい感じの組み合わせ。
ポスターの写真は「Forever Afternoon」という映像作品。日英通称修好条約から150年目にあたる2008年にイギリスで現地製作した15分の短編映画。「不思議の国のアリス」の噛み合わない会話が効いている。インスタレーションは初期の作品で、最後に過去のスクラップの展示があって、それを読んで、「え?あれって素材、木なの?」とか気付かなかったことや、作品の意図を掴めて、それらを確かめたくなって、戻ったり、と、ぐるぐると会場をまわってしまいました。森の空き地で迷子になったみたいってちょっと面白く思ったりして。最近の作品は油彩でした。

府中市美術館は常設展も良いので、そちらもじっくり楽しんで、物販で昨年買いそびれた「江戸絵画お絵かき教室」の図録が残ってたのでそちらを購入して次の目的地へ。

公園の水場にいた鳥さん、ぷくぷくしてた

方向的に寄りやすいかな?と思って調べたら、府中市美術館からは武蔵小金井駅行きのバスも出ているので、そちらで移動して、中央線で三鷹へ。初めての三鷹市美術ギャラリーです。

和紙がおりなす日本の美

とてもいいと評判を聞いて、あと、千代紙とか綺麗よね、みたいな軽い気持ちと、駅からすぐで行きやすいんだ〜?初めての美術館、新鮮っていう好奇心で行ってみましたが。内容もボリュームも充実の素晴らしい展示でした。チラシ見たら前期と後期で展示替えがあったと知って、前期も見たかったな〜と後悔しました。

文化3年(1806年)創業の和紙舗、榛原の明治から昭和初期にかけて製作された千代紙、団扇、短冊、ぽち袋、封筒などの紙製品の展示なのですが、初っ端から河鍋暁斎の千代紙がふんだんに展示されていて、こんなところで河鍋暁斎が見れるとは!と、こんな華やかな千代紙を作っていたんだ?!という喜びと驚きで興奮してしまった。バナーの絵は河鍋暁斎の千代紙「重陽」です。他にも福田平八郎に竹久夢二にと、眼福でした。有名な画家の作品以外は、クレジットがなかったけど、どれも素敵なデザインばかりで、どんな画家、デザイナーが仕事していたのかな?などと想像を巡らせたり……本当に良いものを見れて、幸せな気分になりました。物販には千代紙をモチーフにしたグッズがたくさんで、こちらでのお買い物も楽しかったです。

三鷹市美術ギャラリーは夜8時までなのもうれしいなあ、と思いました。今後の展覧会もチェックしていこうと思います。

本阿弥光悦の大宇宙 東京国立博物館 2024.1

「始めようか、天才観測。」って、変わったコピー、と思ったけど、天体観測にかけているのか、展覧会タイトルが大宇宙なだけに、と今気づきました。

1月中にトーハク参りをしたいな、と思っていたら、ちょうどこの企画展がはじまったので行ってきました。

入ってすぐに国宝「舟橋蒔絵硯箱」が。360°ぐるりとじっくり見られます、ぷくっとした形の愛らしさに、散らし書きの書の優美さ、金粉の美しさ、何回見ても飽きないです。物販もこの「舟橋蒔絵硯箱」のグッズが多かったです。

第1章は光悦芸術の源泉ということで本阿弥家の家系図や書状や家職の刀などから。刀は相変わらず人気がありますね、混んでました。私は光悦の印をじっくり見ました。木製なのも意外。「折紙」という本阿弥家による刀剣鑑定書があって、「折紙付き」の語源になっているとか。

第2章は謡本と蒔絵、第3章は書、第4章は茶碗、という構成で。私のお目当てはやっぱり書なので、第3章を中心に見ました。銀をふんだんに使った俵屋宗達の絵との組み合わせの豪華な「鶴下絵三十六歌仙和歌巻」も素敵でしたが「いろは歌」も素朴でよかった。

光悦のマルチアーティストぶりを堪能してからは本館へ。

トーハクは建物自体が楽しめますね

まずは長谷川等伯の「松林図屏風」お正月は年明け2週間展示されますが、等伯能登半島生まれということから、能登半島被災地の応援のため、4週間に延期されたため見ることができました。

長谷川等伯「松林図屏風」

ぽわ〜っとした空気感が美しくて好きです。

伊藤若冲「松梅群鶏図屏風」

若冲の屏風も!

石灯籠が点描になってる

鶏のポーズがとにかく愛らしいのですが

梅の描写も不思議な形で、見事です

横山大観 「無我」

濤川惣助 「七宝富嶽図額」

遠目から、きれいな富士山の絵だなあと近づいたら七宝でした。見惚れました。

浮世絵の室では、こないだ観たばかりの鳥文斎栄之を。

鳥文斎栄之 「風流五節句・人日」

鳥文斎栄之 「風流五節句・人日」

恵比寿、大黒天、福禄寿が、柳橋の船着場から猪牙舟に乗って吉原に向かう道中を描いた絵巻。シックな色合いから最後は艶やかになってます。

鳥高斎栄昌 「正月遊」

門人の鳥高斎栄昌も。新年にぴったりの絵です。

博物館に初もうで「謹賀辰年ー年の初めの龍づくしー」という室では、辰年にちなんでさまざまな龍の作品が。特に印象に残ったのはこちら。

伝陳容筆 「五龍図巻」

最後は、東洋館、8室の「生誕180年記念 呉昌碩の世界ー金石の交わりー」へ。トーハクは本当に見るものたくさんで忙しい(と書いてうれしいと読む)。

書、画、印、と呉昌碩の世界を堪能しました。台東区書道博物館との連携企画。そちらものぞきに行ければなあ、などと思っています。充実の1日でした。

サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展 千葉市美術館 2024.1

入口で係の人に「撮影可能な作品以外は禁止です」って言われて「あ!撮影できる作品があるんだ」って顔に出たらしく「…4点ですが」って目をそらして言われてちょっとおもしろかったです。

2023年のトップ3の後は、今年行きたい展覧会2024のハッシュタグがありまして。

私はそのうちの1つがこの「サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展」でした。(残り2つはおいおい)千葉市美で荒井良二展をみたあと、次の予告のチラシを見て、テンションが上がってしまった。浮世絵展で1つや2つ展示されているのを見た記憶があるようなないような、主に画集でしか見たことのなかった10頭身12頭身?美人の浮世絵で有名な鳥文斎栄之がまとめて観られるとは!

前期後期で多く入れ替えがあるみたいなので、開幕早々行ってきました。初日の16日だったらさや堂ホールで獅子舞があったのだけど、予定合わず。お正月らしくていいな、いつか見てみたいです。

鳥文斎栄之はタイトルにあるとおり、旗本の出身から浮世絵師になった人で、明治時代に外国に多くの作品が渡ったため、あまり注目されてこなかったのか、この展覧会も世界初だそうです。

川一丸船遊び 大判錦絵5枚続 豪華!

新大橋橋下の涼み船 こちらも大判錦絵5枚続

美人画が堪能できる絵師ですね。門人の章もあって、人気で力のある浮世絵師だったことがわかります。

郭中美人競 大文字屋内本津枝 門人 鳥高斎栄昌の作品

物語絵も、伊勢物語源氏物語など、なんか優雅でしっとりした感じです。「紅嫌い」←その通り、紅を使わない刷り、「紫絵」←紅嫌いから特に紫を多用した色合い、の手法を初めてみたと思います。どちらもシックで、新しい浮世絵の魅力を知りました。
後期も楽しみです。図録も買ったので読み込んでおこう。


同時開催とある、「武士と絵画」がまた素晴らしかったです。
ここで、徳川家光へたうま個性的な絵に出合えるとか。鍬形蕙斎(北尾政美名義含む)に、酒井抱一、鈴木基一に、ともりだくさんでした。

常設展も!曽我蕭白とか、豪華。やっぱり千葉市美術館はいいですね。

 

 

 

 

テオ・ヤンセン展 千葉県立美術館 2024.1

去年の12月のイベントに行ったとき、入場2時間待ちで断念したテオ・ヤンセン展に満を辞して行ってきました。千葉みなと駅から徒歩で、道も美術館の周辺もそんなに混んでないし、空いてるかな?と油断してたらなかなかの混み具合、みなさん車で来ていて入り口が違ったようです。

アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス

テオ・ヤンセンのアトリエでのインタビュー動画を見て、制作の素材やその作り方を知る。プラスチックチューブやウレタンチューブ、結束バンド、ペットボトルなど、身近な素材ばかりです。

「ストランドビースト」とはオランダ語で砂を意味する「strand」、生物を意味する「beest」を組み合わせたヤンセンの造語。そして作り出された(生み出された?)ストランドビーストたちは、その制作の順に〇〇期、〇〇期と時代があって、進化しているのです。年表の展示もありました。必ず名前に「アニマリス」と付きます。これも英語で動物を意味する「animal」とラテン語で海を意味する「mare」を組み合わせたヤンセンの造語。あくまで生命体なのですね。

ストランドビーストの生息地はヤンセンの故郷オランダのスフェベニンゲンの海岸。砂浜を歩く歴代のストランドビーストの映像を見ることができました。背景の海、砂浜、ストランドビーストと、その動きによって可視化される風、その組み合わせがとても美しく、これが完成形なのだな、と思いました。

アニマリス・オムニア

私が行った時間ではちょうど、アニマリス・オムニアのリ・アニメーションを見ることができました。ストランドビーストはスフェベニンゲンの海岸での生息が作品なので、それ以降のデモンストレーションはすべてリ・アニメーションと呼ばれるそうです。

リ・アニメーションのあとは近くで観察できます

水感知の部品 海岸を歩くので海に近づいてしまった場合これで感知して避けるそう

素材は再利用もされるので、動かなくなったストランドビーストは化石、となります。放置というか放棄?される場所も森の中にちゃんとあるそうです。

化石、として展示されていました

スケッチや模型の数々はヤンセンの頭の中をのぞいているよう

イベントでも活躍したアニマリス・オルディス 会場内で一緒に歩くことができました

映像で見て「素敵だ〜」ってなんとなく好きだったテオ・ヤンセンとストランドビーストですが、その制作の背景を知ることにより、ますます好きになりました。じっくりその世界観を味わいたいです。








展覧会のちょっといい話 絵本と近代美術のあれこれ 板橋区立美術館 2024.1


こちら、11月からやっていて、所蔵品の武井武雄の刊本139冊全て展示されるというのに惹かれつつなにぶん、板美は遠いなあ……となかなか腰が上がらなかったのですが、新年早々連休がある!展示も1/8まで!だったのでえいやっと行ってきました。2024年の展覧会初めとなりました。

相変わらずののぼりです。ありがとうございます。

武井武雄と刊本の説明

さまざまな手法で作られた本たちが並びます。

武井武雄といえばのラムラム王もちゃんとあった!

本の素材や印刷方法のおもしろさもあるけれど、やっぱりデザインとイラストに惹かれます。

これは、とても繊細な、昔の洋服のタグにありそうな素材です。

この、「エリアナと蝶」はなんと磁器。

頒布会員へのお手紙、こんな贅沢で楽しい頒布会、参加してみたかったです。

刊本をこんなにじっくり見れて撮影もできてって機会は初めてだったので大満足でした。

他にも、板美らしい、絵本の展示や池袋モンパルナス、板橋美術懇談会(ハンビコン)の芸術家の作品など、充実した展覧会でした。次回の展覧会は『シュルレアリスム宣言100年』シュルレアリスムと日本、だそうなのでこちらも興味深いです。遠いけどまた行きます、永遠の穴場、板橋区立美術館

2023年の展覧会トップ3

X(旧Twitter)で毎年あるハッシュタグ、『0000年の展覧会トップ3』いつからか参加しているのですが、2023年はこのようになりました。順序不同です。

 

クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ 東京都現代美術館

ネット上に上がっている画像を見ても、「この展示、どういうしくみ?」と頭の中にはてなマークがいっぱい浮かんで全然想像がつかなかったのですが、行ってみてびっくり!思いもつかない展示で圧倒されました。とにかく美しかった、そしてすごいボリュームでした。本当に観ることができてよかったな~と心から思った展覧会でした。

 

森本美由紀展 弥生美術館

大好きなイラストレーター。素敵なイラストはもちろん、若手時代から、自分のスタイルを確立するまでの努力が見える作品の数々。そして、あるイラストに添えられた文、「おばあちゃんになってもこんなイラストを描き続けていたい」という言葉に胸が痛くなりました。本当に早逝が悔やまれます。

創作への思いがクロッキーから伝わります

 

パリ ポンピドゥセンター キュビズム展ー美の革命 国立西洋美術館

最後の1つは本当に迷ったのだけど、こちらが滑り込み。キュビズムの歴史がよくわかって、興味深い展示でした。キュビズムをこんなにまとめて掘り下げた展覧会は初めて体験しました。立体が多いのもよかった。こちらはまだ開催中、1/28まで。

キュビズムといえばブラック 果物皿とトランプ ジョルジュ・ブラック

キュビズムといえばピカソ 輪を持つ少女 パブロ・ピカソ

赤い木 フランシス・ピカビア

キュビズムの風景 マルク・シャガール

女性の頭部とテーブル アレクサンダー・アーキペンコ

座る女性 レイモン・デュシャン=ヴィヨン

2024年もたくさん芸術鑑賞の旅に行きたいです。






2023年振り返り

雑誌の星座コーナーのイラスト 山羊座 (森本美由紀展より)

今年行った展覧会を振り返ってみる。とりあえず羅列。

1月

京都・智積院の名宝 サントリー美術館

クリストとジャンヌ=クロード “包まれた凱旋門” 21_21 DESIGN SIGHT

ヴァロットン 黒と白 三菱一号館美術館

ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展 国立西洋美術館

面構 たちむかう絵画 片岡球子展 そごう美術館

大竹伸朗展 東京国立近代美術館

マリー・クワント展 Bunkamura ザ・ミュージアム

 

2月

ウェンデリン・ファン・オルデンボルフ 柔らかな舞台 東京都現代美術館

田村セツコ展 弥生美術館

王羲之と蘭亭序 書道博物館

 

3月

クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ 東京都現代美術館

レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 都美術館

国芳門下の2大ライバル 芳幾芳年 三菱一号館美術館

佐伯祐三 自画像としての風景 東京ステーションギャラリー

仲條正義名作展 クリエイションギャラリーG8

六本木クロッシング2022展:往来オーライ! 森美術館

マリー・ローランサンとモード Bunkamura ザ・ミュージアム

 

4月

江戸絵画お絵かき教室 府中市美術館

 

5月

森本美由紀展 弥生美術館

 

6月

ポール・ジャクレー 太田記念美術館

今井俊介スカートと風景 東京オペラシティアートギャラリー

 

7月

蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる 国立新美術館

マティス展 東京都美術館

 

8月

ソール・ライターの原点 ニューヨークの色 渋谷ヒカリエ

写真のうた平間至展 渋谷ヒカリエ

フィンランド・グラスアート 庭園美術館

山下清展 百年目の大回想 SOMPO美術館

 

9月

デイヴィット・ホックニー展 東京都現代美術館

ピカソのセラミックーモダンに触れる ヨックモックミュージアム

 

10月

うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈展 東京都美術館

やまと絵ー受け継がれる王朝の美ー 東京国立博物館

ジョセフ・アルバースの授業 色と素材の実験室 DIC川村記念美術館

横尾忠則 寒山百徳展  東京国立博物館

 

11月

棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ 東京国立近代美術館

大巻伸嗣 真空のゆらぎ 国立新美術館

 

12月

new born荒井良二 千葉市美術館

石川真生 私に何ができるか 東京オペラシティアートギャラリー

パリ ポンピドゥセンター キュビズム展ー美の革命 国立西洋美術館

 

以上38展覧会、かな?リピートしたのは、オルデンボルフとジャクレーとやまと絵。

4〜7月が少なめなのはミッチーのツアーと重なるのと今年は家の事情もあったせい。8月はコロナになってしまいほぼひと月出かけられなかった上、9月も調子が戻らず、ここで行きそびれた展覧会がたくさんあったのがとてもくやしい。蔡國強、開幕すぐに行ったのは正解でした。何があるかわからないから早めに行くのがいいんだな、やっぱり。

ツイッターの#2023年の展覧会トップ3(毎年ある、年をかえて)を呟きたいのだけど、まだなかなか絞れない……。