旅の目的は主にアートです。

旅は日帰りも含みます。近くの美術館から遠くの美術館まで。観たいものは観たい!気ままな鑑賞日記です。

フィリップ・パレーノ この場所、あの空 ポーラ美術館 2024.12

美術館入口

6月開幕で、夏は忙しいけど、秋になったら、一泊くらいでのんびり行けるだろう……なんて思っていたら、最終日に弾丸日帰り駆け込みになってしまった。
でも行けて本当によかったな〜としみじみ思う展覧会でした。

展覧会入口

現代フランス美術を代表するアーティスト、という情報しか知らなかったのですが、この作品を画像で見て、「この空間に行きたい!」と思ったのでした。

「私の部屋は金魚鉢」

外が明るいので写真を撮ると魚さんたちがどうも暗くなってしまうのですが。その空間にいるときは気づかなかったけど、写真で見ると外の空の青が映り込んでいていいですね。

外に出たい?

ぷわぷわと漂う

天井についちゃったり、部屋から出そうになって、係の人にさりげなく連れ戻されていたり、なんか、魚の心境?を勝手に想像してしまった。

ふきだし(ブロンズ)

こちらは、丸いバルーンによく見ると、ちょろっとしっぽのようなものが。ふきだしです。漫画とかの。SNSで飛び交う発言。もとはある労働組合のデモンストレーションで参加者のメッセージが書かれる予定だったそうです。

天井にびっしり

あとは、映像の作品とインスタレーション作品の組み合わせが2点。どちらも、その組み合わせで、自分がその映像の中の一部のように思わせてくれる空間でした。

ヘリオトロープ

マリリン

オレンジの光がスクリーンにあたって、鑑賞者たちの影が映る、時間になると窓にシャッターが降りて暗闇となり映像作品「マリリン」が始まります。映像とともに奏でられるピアノは無人演奏だったのだろうか、聞いてみればよかった。

マリリンのドローイング

ホタルのドローイング

作品制作では詳細にドローイングをするそう。ライティングがおもしろくて、ライトの点灯で見える絵が代わる。

「どの時も、2024」のスクリーン

もう一つの映像作品「どの時も、2024」はコウイカや細胞、粒子などの映像。どんどん拡大されて、まるで宇宙にいるみたいな不思議な気持ちになる映像。映像の時間までは、インスタレーションの作品が見れます。

マーキー

これもまるで生物みたいです。
ポーラ美術館の空間は、現代アートによく合うなあ、などと思いながら楽しく鑑賞しました。

その後はコレクション展をのぞいて、ハマスホイに感動したりなど。

そして1FのHIRAKU Projectを忘れずに。

HIRAKU Projectは、ポーラ美術館振興財団の助成を受けた作家の活動を紹介する展覧会シリーズ。今回は鈴木のぞみ「The Mirror,the Window,and the Telescope」

「窓の記憶:関井邸2階東の小部屋」

アトリエの古い家に昔の窓があって、かつてその窓から見えた景色を写真で焼き付けた作品。他も、ガラス、鏡、などにいろいろな風景が焼き付けられています。

どれもノスタルジックな気持ちになってしまう。素敵な作品でした。

そして、遊歩道にあるロニ・ホーンに会って……

鳥葬

これは2年前。

だいぶ様子が変わりました。この時は冬だったのか。映り込む秋の空がきれいだけど、せつないような。

紅葉もきれいでした

今度こそゆっくり来るぞ、と思いつつ、後にしました。

そして箱根は相変わらず混んでいました。

特別展 昭和モダーン モザイクのいろどり 板谷梅樹の世界 泉屋博古館東京 2024.9

美術系のメルマガで見かけた「板谷梅樹」という名前、ん?板谷?もしかして、と思って展覧会のサイトを見に行ったら、やっぱり板谷波山の息子だった。

「花」のモザイクの可愛さに、いいな〜と思って会期も短いし久しぶりに早めに足を運びました。

泉屋博古館は京都にあって、東京は分館、と思っていたら、改修工事を経て泉屋博古館東京になったのね。

モザイク画の展覧会というのは初めてかもしれない。父である陶芸家板谷波山の砕いた陶片に心惹かれたのがきっかけだそうです。

ただ、波山のほわんとした色彩とは正反対のとても色鮮やかな作品でした。

 

撮影可だった、この大きな作品

三井用水取入所風景

モザイクの見事なグラデーションや組み合わせに圧倒されました。

昭和モダーン、というタイトルと花や鳥の可愛らしさに、そういうの好きかも、って軽い気持ちだったのですが、なんて美しい芸術なんだろう、と目が覚める思いでした、本当に、来てよかった、と感動してしまった。

色構成の緻密さが、見事で。具象は、人物の肌の色の組み合わせとか花の茎の表現とか、ずっと眺めていたくなります。どれも素晴らしかったけれど、やっぱり「花」(2作品ありました)が心に残っています。

花 実物は本当に色鮮やかでした

飾皿や箱の模様の組み合わせもまさに、モダンで。こんなのを身近に置けた生活が羨ましい。戦時中、生活のために作っていた小さな工芸品、ペンダントや帯留めなどはなんとなく、七宝焼を思わせたり。

出光興産の定年退職記念に贈る飾皿の制作も手がけていたそうで、展示されていました。こんな素敵なものをもらえたらうれしいでしょう、大切にとっておかれたのだろうな。

一昨年、板谷波山生誕150周年展をきっかけに、「板谷姓の梅樹という人のモザイクがある」と問い合わせがあり、この初めての展覧会に結びついたそうだけど、まだ、眠っている作品が現れたらうれしいな、などと思いました。

とにかく、素敵な作品との出会いでした。

929日まで。

宇野亞喜良展 東京オペラシティアートギャラリー 2024.6

 


GW〜5月は自分の作品の制作に追われて結局ひとつも展覧会に行けず、見逃したのもちらほら……。宇野亞喜良展、お正月の日曜美術館もよかったし、早めに行きたかったのに、結局6月に入ってからとなってしまい、混んでる中での鑑賞となりました。一部を除き撮影可だったので画像多めです。

宇野作品との出合いは、イラストレーションだったので

ここらへんのイラストのイメージ、書き文字も素敵

グラフィックデザイナー時代の作品をあらためて観たので新鮮な気持ち。

明治チョコレートのパッケージ

リサイタルのアートワーク

マックスファクターの新聞広告シリーズ

マックスファクターの新聞広告

マックスファクターの中でもこれは、新聞広告の印刷の粗さを生かして、ボッティチェリの春にモデルさんを溶け込ませたもの。素敵。

装丁 ムッシュウ・寺山修司は愛読書です

寺山修司があちこちにいました。

木枯し紋次郎の装丁で思い出すこと

大学時代、宇野さんが講義にいらしたことがあって、木枯し紋次郎の挿画を描くときに、確か、何かの衣装の名称をおっしゃって、固有名詞だけで、知らない衣装だと描けないから大変で〜みたいな話をしてくれた記憶があります。そのときさらさら〜と黒板に描いてる左手を、美しいなとぼんやり思って見てました。

コクーン歌舞伎の舞台幕

アングラ演劇のポスターでよく見るな〜とは思っていましたが、グラフィックだけでなく美術、企画でも携わっているのだな、と。

毛皮のマリーの衣装スケッチ

毛皮のマリーといえば美輪明宏さんですが、宇野さんのイメージだとこんな感じなのね。

不思議の国のアリスをモチーフにしたお芝居のアートワーク

星の王子さまのセット

スタジオライフ シェイクスピア十二夜の舞台セット

他には、作家や画家をモチーフにした作品など。

澁澤龍彦

セザンヌ

ピカソ

セザンヌは「OH!セザンヌ」というタイトルだった。なんかおちゃめ。

印刷インクの実験的な作品

かと思えば、こんな実験的なポスターも。バレエ公演のポスター。

立体作品も同じイメージの世界

最近の作品、俳句をモチーフに

BUCK-TICK RAZZLE DAZZLEのジャケット

RAZZLE DAZZLEの思い出は、ノイタミナ(深夜アニメ枠)の「屍鬼」のオープニング曲が、なんてかっこよくてストーリーにぴったりなんだろう?と調べたらBUCK-TICKで、びっくりして、いや、まだこんなにかっこよくて活動しているんだ!と感激して収録しているCDを買ったら、アートワークが宇野さんでさらにうれしくなった記憶があります。BUCK-TICKファンなのかな〜って方もちらほら見かけました。

マジョリカマジョルカ

マジョリカマジョルカは化粧品、すごく可愛い耽美で好きでしたね。ミラーはいまだに使っています。

マジョリ画

マジョリ画は似顔絵メーカー、作ったけど、もうどこか行ってしまったな、ちゃんと取っておけばよかったです。

日曜美術館新春スペシャルでのんさんとの対談で描いた絵

展覧会の最後を飾っていました、そして、

最後の宇野さんの挨拶文に直筆サインが添えられていました。挨拶文で印象に残ったのは「イラストを生産している」って言葉。その頭、その手からなんでも生み出せるのだろな。その証拠に、15才の時の自画像やスケッチは、天才ってすごいなというものでした。

15歳の時の自画像とスケッチ

18歳の時のクロッキー


日曜美術館横尾忠則と対談していたけど、二人とも年齢を超越した何か、でしたね。一緒にたい焼きを食べる姿はかわいくて思わず笑ってしまいました。

オペラシティでは6/16までですが、巡回の予定があります。
2024年9/14~11/9 刈谷市美術館 2025年1/25~4/6 群馬県立館林美術館

 

 

 

『シュルレアリスム宣言』100年 シュルレアリスムと日本 板橋区立美術館 2024.4

相変わらずの遠路はるばる……バナー

シュルレアリスムを知る入口はサルバドール・ダリが多いかと思うけれど、例に違わず私も子供の頃にみた不思議なダリの世界には魅了されました。
今年はアンドレ・ブルトンシュルレアリスム宣言から100年とのことでシュルレアリスム関連の展覧会、展示が多いような気もする。東京都美術館ももうすぐキリコ展が始まるし。もしかしたら今の時代の空気感にあっている、とかの理由もあるかもしれないけれど。
1/8の「館蔵品展 展覧会のちょっといい話–絵本と近代美術のあれこれ–」を観に行った時に、予告ポスターを見ながら絶対行こうと楽しみにしてたのに、最終日に滑り込みで行ってきました。1/8とは違って混んでました。あんなに混んでる板美は久しぶり。

日本のシュルレアリスムの活動が、歴史を追って展示されていて、作品以外にも出版物もあって、とてもわかりやすい構成になっていました。ちょっと順路が紛らわしいところもあったけど。

フランスで起こったシュルレアリスム運動が日本に入ってきて、影響を受けた芸術家たちが表現を広げ……でも時代が悪く、戦時下になり、危険思想となって弾圧を受け、(東京美術学校(今の東京芸術大学)ではシュルレアリスムが禁止されたり。瀧口修造と福沢一郎は治安維持法で逮捕されている。)さらに、若い芸術家たちは戦争で命を落とした者も多く、制作を続けていられたらどんな風に作品が変わっていっただろうか?と思うと悔しいことこの上ないです。戦後もシュルレアリスムの影響は続き、社会問題、反戦というテーマの作品が出てきて、その表現方法からそれらのテーマにも昇華しやすかったのでは?と思いました。

東郷青児(意外!)の作品と大好きな植田正治の作品を観れたのがうれしかった。あと一番印象に残ったのは堀田操の作品でした。

この展覧会は巡回展なので、昨年、京都から始まって、この後は三重県立美術館で4/27~6/30です。多くの人に観てもらえるといいな、と思います。

ポスターのビジュアルは 浅原清隆「多感な地上」



生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真 東京ステーションギャラリー 2024.4

メインビジュアルは「(馬と少女)」山根曲馬団というサーカスを撮影したシリーズの1枚

広告を見て、その写真にとても心惹かれて鑑賞。

安井仲治、知らなかったので、まっさらなままで観てみました。

20年ぶりの回顧展。大正から昭和戦前に活躍した写真家で、大阪生まれで18歳で浪華写真倶楽部(なにわしゃしんくらぶ)に入会し、活躍したそう。

初期の頃の作品のキャプションに多くあるのは「ブロムオイル」という技法。油絵具を使った技法で、そのせいか、写真だけど絵のような味わいがあるというか。

労働者をモチーフにした「或る船員の像」では、モデルが被写体にされることを不快に思わないか、表現者としての葛藤もあり、なんか、まっとうな人、という印象。

風景写真、特に都市のを観ているとだんだん落ち着かないというかセンチメンタルな気分になって、なんでだろう?って考えたら「ああ、知らない街だからだ」と気がついた。同時代の写真家の展覧会は例えば桑原甲子雄とか観たことがあるけれど、大体、舞台は東京なので、「ああ、ここは今でいう◯◯あたり」っていう何となくの見覚えがある風景であることが多いのだけど、おそらく大阪を中心に撮られている風景は、私にはまるで見知らぬ外国のように思えるからではないかと。

そのかわり「蝶」「(少女と犬)」などの写真は、不変的な美しさを感じた。

実験的な「半静物」(その場にあるモチーフに少し手を加え、組み替えて撮る写真、安井仲治のオリジナルな手法)やシュルレアリスムに影響を受けた写真も、社会的な時事の写真も、独特の芸術性が感じられる個性的な写真で、当時、抜きん出て写真家の牽引的な存在だったというのも納得です。

病気のため38歳で早世。晩年の作品「流氓(るぼう)ユダヤ」シリーズ。ナチスから逃れて神戸に着いたユダヤ人たちを撮った作品、こちらもただのポートレートではない構成の作品があって、魅力的だったのだけど、どんな思いでレンズを向けたのかなあ、とも思います。最晩年の「上賀茂にて」シリーズ3作品が展示の最後。作品数が多くボリュームがあって、じっくり観ていたら、結構な時間が経っていました。

年表を見ながら、戦争を生き抜いたとして41歳、その後の日本、もしかして世界、ともっともっと素晴らしい作品が撮れただろうになあ、と悔しく思いながら、会場を後にしました。

撮影スポット「(顔) (Faces)」

撮影スポット「(道化) (Clown)」

ポスター 左:「作品」この写真がいちばん好きでした

撮影パネルの前で自撮りを試みている人がいて、うまくいってなさそうだったので撮ってあげようと声かけてみたら外国の方だった。旅先で美術館、かな、いいな。

麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期 2024.3

麻布台ヒルズギャラリーの開館記念展です。

去年の11月、麻布台ヒルズオープンで、オラファー・エリアソンパブリックアートが設置されて、さらに麻布台ヒルズギャラリーの開館記念展もあると聞いて、「おっ!」と喜びつつも「3月までね、とそのうちに」と思っていたら、結局3月の鑑賞になってしまった。ヒルズのオープン後だと建物自体も混んでるだろうし、となかなかきっかけが掴めなくて。チケットの予約が、普通と体験あり、があったので、せっかくなら体験あり、にしようと思ったら、休日はすべていっぱいだったので、平日の夕方に行ってみました。

早めに着いて、平日でもなかなかの混み具合にびっくりしながら、時間までパブリックアートを見にいきましょう、と中央広場へ。ただ、時期が悪かったのか、芝生の養生期間みたいで紐が張られていてどの作品も遠巻きに見るだけでした。残念。

奈良美智 東京の森の子

歩道側からだと近寄れるけど、後ろ姿

ジャン・ワン Artificial Rock. No.109

曽根裕 石器時代最後の夜

心のメイン、オラファー・エリアソンは森JPタワーのエントランスエリアだったので、じっくり見ることができました。

オラファー・エリアソン 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期

吊り下げられた4つの螺旋状の構造体。

「作品に使用されている空間充填立体のモジュールは、 双対称十一面体として知られ、 菱形、 凧形、 三角形からなる11の面を持ちます。 この組み合わせや積み重ねでより大きな構造物を作ることが可能ですが、 面が奇数であるため、 結果的に予期せぬ蛇行性が生まれます。 さらに本作では、 持続可能性への取り組みとして、 リサイクルされた金属を鋳造する実験的な技法を採用しています。」(作品解説より)

展覧会の最後にインタビューの映像で金属、亜鉛って言ってたような。

上に上がっても見たけれど、下からの角度が好き。

麻布台ヒルズの感想は、ベンチが多いのはいいですね。

あと、まだ、全部オープンしているわけではなく、いついつOPENの文字が付いている囲いがいっぱいありました。エルメスがオープン直後で、ビジュアルが可愛かった。

予約した時間になったのでギャラリーへ。ロッカーもあったので仕事帰りでも便利。

エントランス 「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」の細部がわかる

混む時はこちらに並ぶのかな

入口でチケットを見せると、「体験」の説明をしてくれて、整理券をもらえました。おそらく私が一番だったみたいなので、入場後、すぐそちらの作品「終わりなき研究」へ移動。

「終わりなき研究」は2005年の作品とのこと。19世紀の数学者が発明したハーモノグラフという機械を使った作品。スタッフの人の説明では、振り子が3つあって、台の1つの振り子、ペンに連結した2つの振り子を動かして幾何学模様を描き出す、動かし方、速度など、すべて自由、それによってまったく違う、いろいろな模様ができるとのこと。「練習と本番で2回できます、さあ、やってみて!」という感じだったので、正直言って、無我夢中でやりました~緊張しちゃった~他のお客さんに見られてるし。

描いてる描いてる

機械の全体像を撮らなかったのをちょっと後悔、これは上に鏡があるのでそちらを撮ってみました

私の作品?は単純な丸でなんていうか大胆さがなくちょっと残念な感じでした。スタッフの人は「線の重なりがきれいですよ」って言ってくれたけど。

展示してある作品 どう動かせばこんなおもしろい形が?

まあ、おもしろい経験ができたのでよし、です。あとはのんびり他の作品を鑑賞。

蛍の生物圏 (マグマの流星)

壁に投影される形を見る作品だけど、

その多面体の光も美しく魅入ってしまいます。

オラファー・エリアソン:想像力を擁する砂漠」 からのドローイング

手前から、太陽のドローイング (2023418日)、太陽のドローイング (2023418日)、風の記述 (2023429日)、風の記述 (2023412日)、風の記述 (2023531日)、風の記述 (2023523日)。

ダブル・スパイラル

二重螺旋がモーターで回転していて、1つは下へ、もう1つは上へ動いているように見えます。

呼吸のための空気

「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」と同じモジュールを近くで見れた。

左から、溶けゆく地球 (バナジウム・イエロー)、あなたのエコーの追跡子、私のエコーの痕跡、溶けゆく地球 (カドミウム・イエロー、 グレー)

グリーンランド沖で採取された氷河期の大きな氷の塊の小片を使って描かれた水彩画。

そして最後のインスタレーションが、

瞬間の家

暗闇の空間で、上から吊るされた3本のホースからほとばしる水と絶え間ないストロボの光。水が作り出す形状がおもしろくて、ずっと見てられる。ベンチに座ってほーっとしてしまった。

どの作品もじっくりと楽しめる展覧会でした。写真撮影と1分以内の動画撮影がOKなので、この作品が動画で残せたのはうれしかったな。

もじイメージGraphic展 辺境のグラフィックデザイン 21_21 DESIGN SIGHT  瀬戸内のメルヘン 緑川洋一 フジフイルムスクエア 2024.2 

今年に入ってから、始まったらなるべく早めに行く、というのを心がけてて、今のところ順調なのですが、こちらは終了近くなってからの鑑賞となりました。

21_21は会期が長めなのでつい油断してしまう

文字に関してのグラフィックデザイン展だと従来は過去の大御所デザイナーが取り上げられるイメージがあるけれど、(今回ももちろんあるけれど、あくまで文字デザインの歴史という観点からでした、新鮮!……というか歳取ったんだな、自分、となります、若い人たちの反応がおもしろかった。そして90年代ももはや懐かしい……歳取ったんだな、自分)こちらはDTPやインターネット普及以降のグラフィックデザインの観点から文字デザインの役割を紐解いているので、さまざまな世代、国のデザイナーの作品が取り上げられています。

AD浅葉克己 言わずと知れた糸井重里の名コピー 背景の装飾は高野切などの名跡

若い人たちが「かっこいい〜」と呟いてたAD五十嵐威暢のポスター 心の中で「そうでしょう?」と頷いていましたさ!

 

ギャラリー1:日本語の文字とデザインをめぐる断章で、日本語の書記体系の歴史、文字を軸としたグラフィックデザインの作品を、ギャラリー2:辺境のグラフィックデザインで文字とイメージを統合して発展してきた日本語のグラフィック文化を、そして現代での動きをテーマに分けて紹介していきます。

祖父江慎+コズフィッシュ展ブックデザイ(2016年 日比谷図書館)でも観た祖父江さんの夏目漱石「こころ」についての解説と展示。漱石も装丁にこだわりのある人だったそう。

祖父江慎+コズフィッシュの装丁

大日本タイポ組合の作品は毎回その発想に唸る

思わず「懐かしい!」とうれしさが滲み出てしまったのはこちら。

FSP(化粧品)のパッケージとノベルティ

AD平林奈緒美FSP!使ってたなあ。かっこよくて。雑誌(確か装苑だったような)に袋閉じで広告が付いてた。今までにない化粧品の広告でとにかくかっこよかった。平林さんの資生堂のアートワークは大好きでした。

ポスターもイカす!

北川一成のアートワーク こちらも既成概念を破るというか、当時は強烈でした。

まだ金沢に移転前の国立近代美術館工芸館のポスター、これはおもしろかった。

懐かしがってばかりではいられず。作品は知っててもまとめて見たことなかったデザイナーや初めて見るデザイナーの作品がとてもおもしろい。

最近いいな〜と思う映画のアートワークはだいたいこの方、大島依提亜

大原大次郎の文字表現、平野甲賀のレタリングと石川九楊の書の理論を参照しているとのこと、なるほど。そしてすごい。

こんなパフォーマンスイベントもあったのね、探すのが楽しい。

2021年に水戸芸術館で見たピピロッティ・リスト

chiegon.hatenadiary.jp

こちらのアートワーク、すごくよかったので印象に残っていました。スタッフさんのTシャツ(たぶん非売品だけど)が欲しかった……。私が観に行ったときには、図録も品切れで物販はなかったし、コロナでチケットの半券もなかったけど、京都ではあったようですね、いいな〜うらやましい。

水戸芸術館のポスター

京都国立近代美術館のポスター

京都の方はこんなに凝った半券、かっこいい




デザインは岡﨑真理子 2024年の横浜トリエンナーレのビジュアルも担当で楽しみ

ところで、横浜トリエンナーレ、もう今月からと知ってびっくり。早いなあ。

海外の作品で印象に残ったもの。

Experimental Jetset オランダ

john Warwicker(Tomato) イギリス

M/M (paris) フランス

立体表現。

じゅうりょくモビール「文字」 大原大次郎

空中で重なり合うことで、言葉が生み出される、とキャプションにあったけど、影も含まれると思う。

サイン・看板 上堀内浩平 廣田碧(看太郎)


表現の流行り廃りはあれど、文字はデザインの要素としては不可欠で、こういうふうにテーマに沿って揃ってみられるのはおもしろいしありがたい。

見ているだけで、ああ、90年代、00年代……と、その空気感を思い出すということは、いかにデザインが時代を作る一端を背負っているか、ということだなあなどと感慨深く思いました。

帰りに同じミッドタウン内のフジフイルムスクエアへ

瀬戸内のメルヘン 緑川洋一

この写真、一度見たら頭から離れなくて。「光の魔術師」「色彩の魔術師」と呼ばれた日本を代表する緑川洋一の作品展。

カラーの作品もモノクロの作品も、とても不思議な写真でした。美しくてかわいくて、でもどこかセンチメンタルな感じもする。小規模な展示、でも創作ノートのコピーなどもあって、観てよかった。作品集とか手に入らないかなあ?もっと大規模な展覧会、開催されないだろうか?なんて思いながら帰りました。