旅の目的は主にアートです。

旅は日帰りも含みます。近くの美術館から遠くの美術館まで。観たいものは観たい!気ままな鑑賞日記です。

ルーヴル美術館展 肖像芸術——人は人をどう表現してきたか 国立新美術館 2018.6

いろいろ美術展に行って感想をぽつぽつ上げていると、こんなこともあるのですね。

知人から、某招待デイに、ほどよい混みようの中、音声ガイド付きで 楽しむという機会をいただきました。

f:id:chiegon:20181031142859j:plain

私はルート的に普段あまり使わない、こちらの入り口から……。

ルーヴル美術館の、肖像芸術に焦点を当てた展覧会。

目玉はナポレオンの5点の肖像、 将軍から皇帝へ、その立場が変わっていくにつれ変化していく肖像に 権力としての芸術だなあと思ったり。 最後のデスマスクはちょっとせつないですね。

好きだった作品は

肖像画と絵画のアルバム(画帖)」

インド、デリー(?)1750−1760年頃の作品。

顔は横顔、胴体はやや正面向きの肖像。 金がきれいでした。 君主の表現は洋の東西を問わずだなあと思いました。

f:id:chiegon:20181031143022j:plain

ミラクル エッシャー展 上野の森美術館 2018.6

f:id:chiegon:20181031141044j:plain

エッシャーといえば、だまし絵の版画。錯視とかおもしろいですよね。

人気ありそう…上野の森美術館だし…。これは混むだろう、と早めに行ってみました。 上野の森美術館、毎回思うけどやっぱり動線が苦手だ。 なのに混みそうな人気の展示が多いのよね。これからフェルメールとか。いろいろ展示の仕方を工夫しているのはがんばっているのだろうなあとは思うのですが。

エッシャー展も、8つのキーワードごとの展示が、色分けした内装になっていて

『科学』紫

『聖書』青

『風景』青緑

『人物』緑

『広告』黄緑

『技法』黄

『反射』橙

『錯視』赤

その8色がほぼ無彩色のエッシャーの版画と調和してました。

有名な錯視以外の作品も充実していて、とてもよかったです。

8つのキーワードのうち『風景』と『技法』のコーナーが好きでした。

印象に残った作品

『科学』より

「星」

「二重の惑星」すごい立体感。

『風景』より

「サンジミニャーノ」夜景なのか?建物の白さが美しいコントラスト。

『広告』より

「漢字用便箋のためのデザイン」商業用の作品初めて見た。グリーティングカードなんかもよかったです。

『技法』より

「波」

「地下聖堂での行列」灯りの表現がいい。

「水没した聖堂」静けさを感じるのがいい。

「花火」

「夜のローマ:サンタ・マリア・デル・ポポロ教会」

「眼」光彩、睫毛、睫毛の影、白目の血管までの細かい表現。

『反射』より

「三つの球体 Ⅱ 」台への反射で素材の違いが分かる。

「水たまり」

『錯視』より

「爬虫類」

「空と水 Ⅰ 」

「昼と夜」

「循環」

「平面充塡 Ⅰ 」モチーフ探しが楽しい。

そして、最後の

「メタモルフォーゼ Ⅱ 」制作年の背景(父母を亡くし、ナチスがオランダに侵攻した年)が 解説されていて、いろいろと考えました。

f:id:chiegon:20181031140952j:plain

この絵が再現できる球がありましたが……雨のため断念しました。

ヌードNUDEー英国テート・コレクション 横浜美術館 2018.5

2月の石内都展鑑賞の後、予告のポスターを見て、これは観たいかも、と前売りを買って楽しみにしてました。

目玉はメインビジュアルになってるロダンの大理石彫刻「接吻」。

f:id:chiegon:20181031135137j:plain

大きかった、存在感すごかった、 肌はすべすべだし、こう、抱き合ってお互いの肌に食い込んでいる指とそれを受ける肌の弾力も伝わってくるしで。

頭部にはノミの後が見えたり、細部までじっくり堪能しました。

f:id:chiegon:20181031135224j:plain

ぐるぐる回って、どの角度からが一番美しいかしら?って思ってここだ、って写真撮ったら、 メインビジュアルと同じ構図だった、だよね〜。

真っ暗な空間に浮かび上がる真っ白い大理石彫刻、展示の仕方もよかったですね。

他の作品もよかったです。こんなにヌードばかり観る展覧会もないですね。 関連映像もおもしろかった。

印象に残った作品

イカロス哀悼」ハーバード・ドレイバー

羽と革と海の質感がよかった、しかしイカロスはよくモチーフにされますね。

「裸の少女」グウェン・ジョン

女性作家の作品、憂鬱な色合いがアンドリュー・ワイエスを思い出して好きだなあと思いました。

「浴室」「浴室の裸婦」ピエール・ボナール

「モンパルナスのアトリエ」クリストファー・リチャード・ウィン・ネヴィンソン

「泥浴」デイヴィット・ボンバーグ

「ベッドに横たわる裸婦」ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー

「眠るヴィーナス」ポール・デルヴォー

金子國義っぽい。好き。

「楽園の困難」セシリー・ブラウン

色の組み合わせが素敵だった。

「リサ・ライオン」ロバート・メイプルソープ

とにかく美しい。

「吐き出されたヌード」

フィオナ・バナー

他にもホックニーとかピカソとかマティスとかベーコンとか……。

やっぱり、ヌードって芸術の原点の一つ、人間の体、美しくて、音楽とかリズムすら感じました。

f:id:chiegon:20181031135431j:plain

猪熊弦一郎展 猫たち Bunkamuraザ・ミュージアム 2018.4

f:id:chiegon:20181031132841j:plain

猪熊弦一郎といえば、三越の包装紙。

 個人的には昔通った某講座でMIMOCAこと丸亀市猪熊弦一郎現代美術館のポスター制作の課題をやったことがあるな、そのときはあまり興味なかったのですが、瀬戸内国際芸術祭に行くようになって、ちょっと身近に感じたりして。一回足を運びましたが、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館は素敵な美術館でしたよ。瀬戸内国際芸術祭に関してはおいおい思い出話として上げようと思っているので、そのときに……。

自分が猫好きなこともあって、猫の絵を観に行くのは好きです。

日常生活やシチュエーションに入り込んでいる存在だった猫が徐々にその猫の形そのもののスケッチに描き出されていき、 その後、具象から抽象へ移行して行く様子がよくわかりました。 猫の顔が四角く表現されてて面白い。人と組み合わされていたり。 「猫の形と色を今までの人のやらないやり方で描いてみたいと思った」との言葉の通りでした。

f:id:chiegon:20181031133051j:plain

印象に残った作品

「猫達」

「猫と子供」

「人と猫 Ⅰ 」

「猫によせる歌」

「猫と住む人」

「頭上猫」

題名不明の

「アイロンがけの夫人の上に猫がいる絵」と

「赤いインクで描かれた絵」

f:id:chiegon:20181031132900j:plain

猫以外の

「City Planning Yellow No.1」

「夜を飛ぶ/Flying at Night」

次の瀬戸内国際芸術祭でもまた、丸亀に行きたいな。

サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法 練馬区立美術館 2018.4

f:id:chiegon:20181031131647j:plain

サヴィニャックといえばとしまえんの広告「プール冷えてます」はい、そんな世代です。

ポスターは知っているけど、経歴や人物についてはあまり詳しくなく、 「ポスターかわいいし!見に行こ!としまえん懐かしいし!」なノリで行ってきました。

初期のカッサンドルのアシスタント時代から、自分の個性が花開き、そして晩年まで。 ポスターを始め、その原画、使っていた道具に、最後は1986年のドキュメンタリー映画「街路の人 サヴィニャック」まで 盛り沢山でした。

印象に残った作品

「フランス、食卓の悦び」 ポスターは右向き、その原画は左向きで広告として使われ方をよくわかっているな〜と。

「ブリュナは温まるビール」 カッサンドルっぽい。

「コルテ村のコルシカ展」 ポスターとはまず絵を描くことである。

「ダノン・フルーツ」 木になっているダノン。

ペリエ:天然ミネラル炭酸水」 元はコカコーラ用に描かれたが没になり、ペリエに直してペリエの広告に。たくましいね。

セミア(航空機器メーカー)」 絵の線を上の額縁にも。額装屋さんのアイデア

地下鉄構内に貼られた「エアーウィック」のポスター これも反転してもOKなデザイン。

「レジテックス:フランス人の作業着」

「アストラル エナメルペンキ」

「ダンロッピヨ・マットレス

オパール:私のペルロンストッキング」

「ひとりでに編める ウット毛糸」

「クリームデザート モン・ブラン」

f:id:chiegon:20181031131749j:plain

サヴィニャックの伝えるべきことを絵に落とし込む技術は まさに魔法、素晴らしく贅沢な空間でした。

f:id:chiegon:20181031131808j:plain

ルドン−秘密の花園 三菱一号館美術館 2018.3

f:id:chiegon:20181022181001j:plain

昔の建物を利用した美術館って、展示も建物も楽しめていいですよね。今の所、一番好きなのが東京都庭園美術館なんですけどこちらも好きです、三菱一号館美術館

ルドンの黒の幻想的などこか憂鬱な初期の作品も好きですが自分が最初に触れたのが花の絵だったためか、そちらの印象のが強く残っていて、今回は植物モチーフの作品に焦点を当てた展覧会ということで興味をそそられました。

初期の絵に出てくる得体の知れない物たちが、案内人のごとく壁にいたりして可愛かったです。最近、こういう演出多いですね。印象に残るモチーフを使って。一番びっくりしたのが国芳展で、猫の案内役が壁にはいるんだけど、実際の展示には猫の浮世絵は一点もなかったときですね。何人かのお客さんが「猫、なかった……」って呆然としてたのを思い出します。(※)

閑話休題

メインの、「ドムシー男爵の食堂装飾」
三菱一号館美術館所蔵の『グラン・ブーケ(大きな花束)』は史上最大級のパステル画で、男爵の城館の食堂を飾る装飾の中心。今回は残りの15点の壁画(オルセー美術館所蔵)と合わせての展示のため、三菱一号館の重厚な空気感もあいまって、食堂を訪問したかのような贅沢な空間でした。パステル画の実物の鮮やかさ、いいですね。実在の植物もなんか幻想的に感じてしまう。ルドンの魔法みたいです。

ところで、このとき、「うどん県コラボ」をやっていて。「うどん(香川)県民」は「ルドン」展への無料招待とコラボ記念バッチが進呈。香川県民ではなくても「うどん県に行ったよ!200円割引き!」として、香川県内の指定スポット(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館、直島・草間彌生《かぼちゃ》、観音寺市銭形砂絵寛永通宝」)で来場者本人が写り込んだ写真の提示で当日券料金から200円引きになるサービスも実施って知って、「うどん県に行ったよ!2013と2016年の瀬戸芸で!」と一瞬思ったんですが、自分の写り込んだ写真はなかった……。残念……。2019年に行った暁には絶対撮ろう!またなんかあるかも知れないし!などと誓ったのでした。

(※)
2016年のBunkamuraザ・ミュージアム「俺たちの国芳 わたしの国貞」でのことでした。同時期にやってた練馬区立美術館「国芳イズム展」にはいっぱいいたのですが、猫。

ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜 東京都美術館 2018.3

f:id:chiegon:20181019180403j:plain

ブリューゲル一族と、彼らと関わりのある16、17世紀フランドル絵画の全体像に迫ろうという挑戦的な展示」ということでそうえいば最近、ボスを始め、その界隈を鑑賞する機会が多かったかも、って思って、ふらっと行ってきました。
キャプションが4世代の誰の作品か(父、子、孫、ひ孫世代)を色分けしてあって画期的でありました。わかりやすい!

「花のブリューゲル」ことヤン・ブリューゲル1世とか、「地獄のブリューゲル」ことピーテル・ブリューゲル2世とか、(どちらも子世代)個性というのは滲み出るものなのだなあなどと思いました。ヤン・ブリューゲル2世とアンブロシウス・ブリューゲル(どちらも孫世代)の静物画で描かれている花瓶が、同じものだったりするのもおもしろい。こういうとこは一族ならではという感じもする。

印象に残った作品
「嗅覚の寓話」「聴覚の寓話」ヤン・ブリューゲル2世
「風景の中の聖母子と天使」「聖母子と洗礼者ヨハネと天使のいる森の風景」ヤン・ブリューゲル2世
あれ?私、ヤン・ブリューゲル2世が好きだったのかな?子世代とひ孫世代を繋いだ存在らしいです。

「果物と東洋風の鳥」「果物の静物がある風景」アブラハムブリューゲル(ひ孫世代)
静物画なんだけど、風景画で静物画、みたいな感じでおもしろかったです。