書き留めていたメモと記憶を頼りに。
撮影可と不可でこちらに上げる情報量はだいぶ違ってしまいますが。
1月:
上野アーティストプロジェクト2018
見る、知る、感じる 現代の書 @東京都美術館
現代書の自由な表現に刺激を受けました。
特に、千葉蒼玄の『3.11 鎮魂と復活』と独特な落款に惹かれました。
やっぱり篆刻をやってみたいなあ。
Bunkamura30周年記念
国立トレチャコフ美術館所蔵
ロマンティック・ロシア @Bunkamuraザ・ミュージアム
ロシア文化に特別に興味があるのか、というわけではないけど、建築とか美しいし、チェブラーシカ可愛いし、とか思って。渋谷にライブに行くのでついでにって感じで行ったのだった。今はふらりと美術館に行くのは難しくなって寂しいですね。
キービジュアルになってる『忘れえぬ女(ひと)』をはじめとした人物画も素敵ですが、イワン・シーシキン『正午、モスクワ郊外』など、風景画がいいですね。広大な大地と空。広い国だものね。
同じくイワン・シーシキン 『雨の樫林』は雨が匂い立つようでした。
目玉の日本初公開となる『祭姪文稿』が話題の展覧会。
インバウンドなお客さんの方が多かったような。会期も春節に合わせてますよね。その時期を避けて前期後期行ってきました。
文字の成り立ちや、篆隷楷行草書の歴史を追った展示、『九成宮醴泉銘』の見比べなど、各法帖のキャプションもわかりやすく、書道好き以外にも楽しめる展示だったと思います。
第一会場の一番最後に『祭姪文稿』だけ、ラインが作られてて歩きながらの鑑賞でした。平日で30分待ち、になってましたが実際は15分くらいで観れた感じ。
空いているところを見計らって3回歩きました。英語と中国語の「立ち止まらないでください」がちょっとうるさかったけどまあしょうがないのかな。
他にも懐素の『自叙帖』『千金帖』に米芾も観れたし大いに満足でした。
が、いちいち王羲之を引き合いに出すのは(それも下げる感じで)ちょっといただけないわね、と感じました。
唯一撮影可だった、唐玄宗 筆「紀泰山銘」(拓本)すごく大きな作品で、天井から床に広げられてました。成田山書道美術館では全部吊るしてあるそうで、いつかそちらも観てみたいです。
2月:
小原古邨 @太田記念美術館
知られざる花鳥画家、最近人気ですが、東京での展覧会は初めてだったそう。
愛らしい動植物がいっぱいで楽しいです。
絵師、彫師、摺師、版元が絶妙なコンビネーションでその世界を作っているのがわかる展示になっているのもよかったです。
3月:
子どものための建築と空間展 @パナソニック汐留ミュージアム(現 パナソニック汐留美術館)
子どもの教育黎明期から現代まで、主に小学校の建築をパネルと模型と映像で紹介していて、とても見応えがありました。建築の面白さが楽しめるのかな?と思ってたのですが、その時代に応じた「子どものためのデザイン」を考えてきた作り手たちの想いが伝わってきて、そっちの方に感動してしまった。
インポッシブル・アーキテクチャー
もうひとつの建築史 @埼玉県立近代美術館
20世紀以降の国内外のアンビルト(=未完)の建築を「インポッシブル・アーキテクチャー」と定義した展覧会。
コンペ通ったけど色々あって頓挫した作品、次点以降の評価が高かった入賞作品から、高度成長を見越して建築家たちが構想した近未来的な都市計画、アーティストよりの建築家の理想郷などなど、とてもおもしろかった。建築は街とか生活、社会をつくるようなものだから、建築家みんな思想を持ってる。それがどのような結果をもたらすかは別として。
ザハの新国立競技場の展示がさすがに力が入ってました。模型、CG、映像、そして膨大な設計資料(分厚い冊子が二十数冊…)、実現できたはずの建築、だったのにね。
メインビジュアルの曽我蕭白が強烈で、長澤芦雪の『白象黒牛図屏風』とか国芳とか若冲とか観たいし、って行ってみた。よくよく調べたら1970年に刊行された美術史家・辻惟雄による『奇想の系譜』に基づく、江戸時代の「奇想の絵画」の決定版、とのことで、その本をあらためて読んでみないとな〜と思っている。岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳、白隠慧鶴、鈴木其一、どのアーティストも素晴らしかった。
このポスターで心鷲掴みにされた。作品はどこかでみたことがあったかもしれないけど、まとまって観るのは初めての岡上淑子。
魅力的な作品ばかりなんだけど、残された書簡などから、“お嬢さん作家”扱いされている感じがなんか切なくて悔しかった。時代のせいとは思いつつ。
イメージコレクター・杉浦非水展
@東京国立近代美術館 ギャラリー4
写生帖からスクラップ、16ミリフィルムの映像に、とポスターだけでない、秘蔵の資料盛りだくさんの展覧会。前期後期でじっくりと楽しみました。
特に映像で当時の東京や風俗が観れるなんて新鮮。あと雑誌の記事もたくさんあって、学生が、非水をはじめとした先生方を批評してたり、当時の美術界が垣間見えておもしろかったなあ。
5月:
福沢一郎展 このどうしようもない世界を笑いとばせ
@東京国立近代美術館
杉浦非水目当てで行ったときの企画展。よい評判を聞いたので。
シュルレアリスムは好きだけど、日本のシュルレアリスムに関しては疎くて、福沢一郎も初めて知りました。近代美術館はコレクション展でも日本のシュルレアリスム作品を取り上げてくれるので知識が広がります。
批評家の瀧口修造と治安維持法で逮捕されているのね、瀧口修造は岡上淑子を見出してるし(先述した書簡は瀧口とのもの)図らずも日本のシュルレアリスムを連続して鑑賞したんだな。
タイトルとは反対の、力強さとか生命力を感じるタッチと色。メキシコのアートを連想したら、戦後の中南米旅行の成果の集大成の作品だそう。確かに。
東京駅にこの作品を90°回転した原画をもとにした『天地創造』というステンドグラスがあります。
information or inspiration?左脳と右脳でたのしむ日本の美
NEND×SUNTORY MUSEUM OF ART
左脳とか右脳とかには懐疑的なのですが、NENDのアートワークは好きだし、どんなものかと行ってみました。提示された形のみを観て想像力を膨らますinspirationと詳しい情報と全体像を観るinformation。一つの作品を違う角度から見るという視点は面白いです。2往復してじっくり観ました。
6月
トム・サックス ティーセレモニー
@東京オペラシティ アートギャラリー
予備知識等なしに、なんとも可愛げのあるポスターに惹かれて観に行ったら、運のいいことに、長編映像プログラム特別上映の日で、「The Hero's Journey」「A Space Program」を観ることができました。
そして、展示を観るうちにティーセレモニーは茶道、茶会のこと、と気付くという。いろいろ新鮮な気持ちで楽しみました。
実際にサックス自身がティーセレモニーを行うイベントもあってそれも映像で観ることができました。日本の伝統的な茶の湯の世界とそれを取り巻く様々な儀礼や形式を独自の解釈で再構築した作品を制作するために、本格的に茶道を学んできたそう。おもしろいアート、アーティストに出会えてよかった。
デザインの(居)場所
@東京国立近代美術館工芸館
近代美術館は企画展、コレクション展ともに、チケットを買うとこの工芸館も入館できるのだけど、何しろ美術館自体のボリュームがたっぷりなので、工芸館まで行くとなると一日仕事になってました。
これは、工芸館所蔵のデザインコレクションによる、工芸とデザインの関係、などを考察した所蔵作品展。
石本藤雄展 マリメッコの花から陶の実へ
@スパイラルガーデン
あのフィンランドの「マリメッコ」、かわいい、好き。で、32年間で400点を超えるテキスタイルデザインを生み出し、その後、「アラビア」のアート部門に所属して、現在は陶芸家として数多くの作品を発表している方とのこと。なんて素敵な。
作品は、テキスタイルから陶の作品まで。石本さんの出身地、愛媛県砥部町は200年以上の歴史がある伝統工芸品「砥部焼」で有名だそうで、やはり原点というかルーツに帰る感じなのでしょうか。
クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime
@国立新美術館
今年(2021年)7月4日に亡くなってしまったクリスチャン・ボルタンスキー。もう新しい作品に会えないのかと思うととてもさみしい。2016年の庭園美術館での展覧会、場所と作品が合ってない、って声も聞いたけど、私はとても好きでした。あの空間で、ずっと、ボルタンスキーの作り出す空気にまとわりつかれている感じがして。雨の中、講演会に行って自身を「巡礼者だ」というボルタンスキーの話を聞けたこと、豊島に新しい作品を作ること、2019年に大規模な展覧会をやるよって言われて、うれしかったことなどを思い出しました。
この、ボルタンスキー本人が展覧会会場に合わせたインスタレーションをした回顧展を観れたのは幸せでした。