旅の目的は主にアートです。

旅は日帰りも含みます。近くの美術館から遠くの美術館まで。観たいものは観たい!気ままな鑑賞日記です。

瀬戸内国際芸術祭2019夏 大島 2019.7

こえび隊のツアー後は自由にアートエリアをまわります。

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今は使われていない単身者用の宿舎を利用しています。あまり写真を撮らなかったなあ、もっと撮ればよかったなあ、と少し後悔。

 

『{つながりの家}GALLERY15「海のこだま」』 やさしい美術プロジェクト

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島に唯一遺された木造船。船の使用が許されるようになって、釣りに出たり、近くの無人島へ渡って海水浴などをするときに使ったそう。以前は下にも展示があって中に入れたりしたみたいです。(感想ブログで見かけました)

作品も老朽化してくると見せ方が変わりますね。豊島の『遠い記憶』という作品も、2013年のときは中に入れたけど、2016年には外から見るだけでした。

 

『青空水族館』 田島征三

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陸の上の海中世界。 このステンドグラスは『深海のミジンコたち』

他にも、『捨てられた海』という作品は、漂流物で作った魚。紐をひっぱると、「どうして私を捨てたの?」と声が流れます。捨てた、という言葉に幾重もの意味を感じますね。

 

『森の小径』 田島征三

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島に自生し、潮風に強いトベラやウバメガシ、かつて入所者が山に登り鑑賞していた山つつじを山から移植。また入所者が育てている盆栽の松などを提供してもらい作庭している。大島で暮らす人たちや訪問者が散策を楽しめる庭を目指している。(公式サイトより)

大島の植物は松をはじめ、本当に見事です!

田島征三は他にも新作で『「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-』がありましたけど、 ストレートな表現に圧倒されました。

 

『稀有の触手』 やさしい美術プロジェクト

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床(畳)も壁も天井も深いブルーです。

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窓越しの盆栽が綺麗で立派だなあと思って。

大島で暮らした人の熱を伝える場所を 大島の歌人、斎木創の歌「唇や舌は麻痺なく目に代る稀有の触手ぞ探りつつ食う」には自らの命を燃やし続ける人の生々しい姿がある。遺されたものを通じて大島の一人ひとりから放たれた体温に触れるような場所をつくる。(公式サイトより)

目に代る稀有の触手…つらい経験を、なんて美しい表現に落とし込むのか…。

 

『海峡の歌/Strait Songs』 山川冬樹

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近くて遠い大島と庵治(あじ)を結ぶ 大島の対岸、庵治町。かつては自由を求めて大島から庵治へ海を泳いで渡ろうとする人たちが後を立たなかったという。「隔てる海」を「つなげる海」へ。時を超えて両地の間の海峡を泳いで渡り、その記憶をインスタレーション展示。(公式サイトより)

海を渡っての脱走…以前観た『軍中楽園』という映画を思い出しました。あれは戦争の悲劇でしたけど。入所者さんの短歌を今の子どもたちが朗読します。一人ひとりの人生が浮かび上がってきます。

 

『歩みきたりて』 山川冬樹

一人の歌人の足跡を辿る 終戦後、モンゴル抑留中にハンセン病が発覚し、大島で暮らした歌人、政石蒙。政石の足跡を巡って、モンゴル、大島、松野(政石蒙の故郷)を旅し、各地で撮影した映像と遺品によるインスタレーションを制作。(公式サイトより)

こちらも…どうせ死ぬなら戦争で散ろうと嘘をついて軍隊に入ったものの死ねず、モンゴル抑留中に隔離されたと…幾重にも孤独の人生。映像が美しかった。

 

どの作品も、差別や偏見にあった方々のメッセージがアートの礎になっています。

 

リングワンデルング』 鴻池朋子

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リンデワンデルングからの眺め

タイトルは悪天候で方向を見失い、無意識に円を描くように歩くことをいう登山用語。 昭和8年青松園青年団によって北の山につくられた全長1.5kmの周路。長い間閉ざされていたその旧道を順次復活していく。 (公式サイトより)

ということで、復活させた登山道、が作品らしいです。入り口で、登山登録(ノートに名前と持ってった名札の番号と携帯電話番号を書く)して 緊急連絡先の書かれた名札を下げて入ります。気楽な気持ちで入ってみたのですが、なるほど、登録もさせられるよなって感じでした。

経験上、島へ来るときはそれなりの装備(肌は露出しない、歩き慣れた靴にリュックなど)してたので 大丈夫でしたが、自然のままなので、蔓系の植物に足を取られ壮大に転びました!(てへっ)

幸い怪我はしませんでしたが、超焦った!危うく緊急連絡先にお世話になるところでした。

そして…人生初、セミにおしっこをかけられましたよ! 子供の頃、よく漫画なんかでみたけれど!本当にあるんだ!と呆然としました。

後で聞いたところ同じ虫でも芋虫が落ちてきたり、 入り口の注意書きには蜂に注意の旨(ちゃんと読んでなかった!読んでたら入れなかったかも…)が あったりしたそうで…。なかなかワイルドな作品ですね。ところどころに、入所者さんの言葉、文章が書かれた看板が掲げられているのですが、心の余裕がなくて歩くだけで精一杯でした。

こえび隊の人は「20分くらいで歩けますよ〜」っておっしゃってましたがじっくり見るなら倍くらい時間かかるかも。登山のつもりでどうぞ。単独行動はちょっと心細いかも。(私は心細かったです…)

さて、フェリーの時間まで外を散策でもいいのですが(立派な松もたくさんあることだし)暑さに負けて、カフェ・シヨルで一息ついてました。

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社会福祉会館入口、カフェ・シヨルもこの中です。

 

『物語るテーブルランナー in 大島青松園』 鴻池朋子

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カフェ・シヨルの中での展示。

入所者さんだけでなく、看護師、介護士の方々から個人の物語を語ってもらい、絵にし、それをテーブルランナーにしたもの。ここでも、みなさんの生活が、人生が見えてきます。あとは、映像作品もありました。

残念ながらカフェ・シヨルが営業日ではなかったので、おいしそうなドリンクが楽しめなかった…梅とか瓶に入ってるのが見えて、いいな〜ってなりました。

クリスティアンバスティアンスの作品『大切な貨物』も秋会期からだし。やはり、また来なければいけませんね。

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売店兼食堂で食べたおすし、シンプルなのにめちゃくちゃおいしかったです。