20世紀を代表する彫刻家、没後半世紀を経た大回顧展ーとのうたい文句に楽しみにしていました!私は彫刻のイメージが強かったのですが、油彩もいい、というのも小耳に挟み、ますます楽しみに…。
彫刻は初期・キュビズム・シュルレリスムからその特長ある細長い人物立像の集大成まで(といっても、本人は「完成も完全もめざしていない」というのでそんな言われ方は不本意かもですが)、油彩はあまり数がありませんでしたが、リトグラフと素描(鉛筆画)がたくさんあって見応えがありました。
そのリトグラフや素描ですが、多くの作品に枠線があり、なんというか空気ごと描こうとしているのかしら?と思いました。
他の群像の下の台まで枠に見えてきてしまったりして…。
初期の作品で展示されていた「鼻(1947年)」がとても印象に残った、というか、好きだな〜と思ったのですが、こちらも直方体の鉄枠があって。鉄枠の真ん中に長い鼻が特徴的な胸像がぶら下がっていて、その鼻が枠を突き抜けているのだけれど、鉄枠の中の空気ごと創り上げられたように感じたので。
その後に続いたリトグラフに描かれた枠線を見るたび、こう、描いているものの中に空気(空間?)もあるのかな〜と思ったのでした。枠がない絵は対象物からだんだん空間が広がっていくイメージを持ちました。
そして、人物画の多くは人物の顔だけを中央に真正面から描いていて、とにかく描き込んでいて、目に見えるすべてを表現したい、という情熱なのか執着なのかがたくさんの線から感じられ気が遠くなりました…。ジャコメッティのその頭の中では彫刻も絵も地続きになっているのだろうな…。
油彩ももちろん、よかったです。無彩色のような色彩、色味をもつ無彩色…。不思議と重すぎる感じや暗い感じは受けませんでした。なんか…お洒落…と思ってしまった。あと、やっぱり枠は引くのね…とか。特に、「マーグ画廊」のためのポスターの「アレジア通り(1954年)」が素敵でした。(あ、これはリトグラフでした…)
チェース・マンハッタン銀行のプロジェクト「女性立像」「頭部」「歩く男」(1959年)の展示室のみ撮影ができました。
「歩く男」
「犬」と「歩く男」のポスターが多かったけど、入口にあったこっちの方がお気に入り。猫背なご本人と歩く男のスリーショット、かわいい、そしてやっぱりなんかお洒落。作品制作中の映像のご本人も素敵でした。