中国近代絵画の巨匠 斉白石 東京国立博物館 東洋館8室 2018.11
トーハクの東洋館8室は中国の絵画・書の部屋で、いつもおもしろい展示をしているので好きです。 そして、だいたい撮影もOK。ガラスがあるので難しいけど。
日中平和友好条約の締結40周年を記念し、日本初公開となる北京画院(ぺきんがいん)の所蔵品を通じて、中国近代絵画の巨匠・斉白石(せいはくせき)の人と芸術を紹介する展覧会です。
昔ながらの中国の画は、縁起のいいものをモチーフにしているのが定番みたいです。私も中国に行ったとき、飾られている画に込められた意味を丁寧に説明してもらった経験があります。
菊も縁起物、たぶん、数が9なのも。(中国語で九は久と発音が一緒なので縁起がいい数字)この菊の画は華やかさと朴訥とした感じが同居してていいな〜。
どの画も繊細ながらどことなく素朴。
リスにひよこに鳥。あと、魚を上から見た表情とか。生物たちは愛嬌のある表現だな〜と思っていたら……
昆虫はとてもリアル!すごい技量ですね。
そして一番好きだなと思ったのはこちら。
借山図(第三図)
構図とか色のにじみ具合とか。美しい。
東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流特別企画展 マルセル・デュシャンと日本美術 東京国立博物館 2018.11
昔、深夜番組で「宣誓」という現代美術の作品を裁判にかけるという番組があっておもしろくて見てたのだけど、確かその最終回で満を辞してで出てきたのがマルセル・デュシャンの「泉」だった気がする……。私の記憶が確かならば……。
で、それで、子供の頃に観た「西洋の美術」展の車輪が「あ〜、あれはデュシャンの作品だったのか」と気付いたのです。 こんな経験があると、わからなくてもとりあえずその世界に触れておくというのはなかなか有意義な体験なのではないかと思ったりします。 というわけでデュシャンの作品をまとめて観るのは初めてです。
第1章 画家としてのデュシャン
画家としてのスタート、油絵の作品。様々な手法を取り入れていっているのがわかります。
「デュルシネア(ダルシネア)」
他に好きだったのは
「ピアノを弾くマグドレーヌ」
「シュザンヌ・デュシャンの肖像」
「兎(待ちぼうけ)」
など。どれも空間の作り方が素敵でした。
「芸術家の父親の肖像」にセザンヌの、「ソナタ」にキュビズムの影響が出ているように感じました。また、
「処女No.1」「花嫁」に後の作品への片鱗が見えているように思いました。
第2章 「芸術」でないような作品をつくることができようか
からはいわゆるデュシャンの代表作。 「大ガラス」「泉」に代表されるレディ・メイド 。私が知っているのはここらへんのデュシャンだったので
第3章 ローズ・セラヴィ
でチェスプレイヤーに転向しようとしたことやローズ・セラヴィという別人格で作品を作ったりキュレーターをしたり、というのを初めて知りました。
この第3章と第4章《遺作》「欲望の女」がとてもよかったな〜。
第2部の日本の展示は蛇足かな?と思ったので 特に感想はなしです。デュシャンシャンもあまりかわいくなかったし。
フェルメール展 上野の森美術館 2018.10
「フェルメール展 9/35」文字だけの予告見て日付?!と思ってびっくりしてた知人がいましたが……。
フェルメール現存作品35点のうち、9点が東京で観られる(2点は途中で入れ替えですが)上、よりによって場所が上野の森美術館と大混雑が予想される展覧会、日時予約制の試みが行われるというので、とりあえず行ってみようと8月に10月のチケットを取りましたよ。
平日の午後にして、入場時間開始から30分後に(それまで先に東京国立博物館の京都大報恩寺 快慶・定慶のみほとけに行ってました)会場に行ったところ、それでも入場が20分待ちでした。いつもはグッズ売り場や出口になる方から入って、説明冊子(通常作品の横にあるキャプションがなし)と音声ガイド(入場料込み)を渡され、2階から回る、という構成でした。スタッフの制服がかわいかった。
まあ、平日でも混んでるという噂は聞いていたのでこんなもんだろうって感じでした。混雑具合は。
2階は同時代のオランダ絵画、プロローグとして楽しんでから1階、メインのフェルメールルームを堪能する順路です。が、2階があまりに混んでたのでさっさとフェルメールルームに移動。2階、ちょっと導線が悪いところがあったので、それが原因かと。
フェルメールの作品が収蔵されている美術館の映像を見て、光の通路を通ってフェルメールルームへ。8点の作品がずらりと並んでいて荘厳でした。宗教画の「マルタとマリアの家のキリスト」が、フェルメールでもこんなに大きい絵があったのね、と意外でした。
好きだったのは「ワイングラス」と「赤い帽子の娘」。
そのあと、2階へ戻りさくっと鑑賞、好きだなあと感じたのをじっくり鑑賞しました。印象に残ったのは
「マタイの召命」 ヤン・ファン・ベイレルト
カラヴァッジョの影響が強い作品。
「手紙を読む女」「手紙を書く男」 ハブリエル・メツー
モチーフに込められた意味を読み解くのがおもしろい。
……て感想を書いていたら思い出して、もう一度観たくなってきたな。フェルメールの「取り持ち女」が1月から来るからまた行ってもいいかも……なんて思ってしまった。
オランダ絵画黄金期を楽しんだ後、また、フェルメールルームを堪能して、お目当グッズだった牛乳を注ぐミッフィーちゃんを買って、会場を後にしました。
……かわうい!
京都大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ 東京国立博物館 2018.10
今年の初めに行ったこの展覧会が、
↓
仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ― 東京国立博物館 2018.1 - 旅の目的は主にアートです。
思いの外よかったので、ほんとは隣の会場のデュシャン展だけでもいいかなあと思っていたのですが、こちらも寄ってみました。
大報恩寺は「おかめ発祥の地」……行ったことないや。真言宗智山派の寺院で、「千本釈迦堂」の名で知られていて、春の境内のしだれ桜など、京の四季を彩る寺院として、地元だけでなく多くの観光客にも親しまれているとのこと。今度京都行く機会があったら行ってみましょう、うん。
目玉は、まず
阿難陀 あなんだ、羅睺羅 らごら、優婆離 うぱり、阿那律 あなりつ、迦旃延 かせんえん、富楼那 ふるな、須菩提 すぼだい、大迦葉 だいかしょう、目犍連 もくけんれん、舎利弗 しゃりほつ。
また思い出す「聖☆おにいさん」と思ったら、グッズ売り場でコラボしてました。
やっぱりアナンダはハンサムかな?とか思いながらじっくり見ました。
次に、
重要文化財 六観音菩薩像 肥後定慶作 鎌倉時代・貞応3年(1224)
聖観音菩薩立像 しょうかんのんぼさつりゅうぞう、千手観音菩薩立像 せんじゅかんのんぼさつりゅうぞう、馬頭観音菩薩立像 ばとうかんのんぼさつりゅうぞう、十一面観音菩薩立像 じゅういちめんかんのんぼさつりゅうぞう、准胝観音菩薩立像 じゅんでいかんのんぼさつりゅうぞう、如意輪観音菩薩坐像 にょいりんかんのんぼさつざぞう
どれも、一人一人表情や、あと法衣(でいいのかな?)にも違いがあって、おもしろい。
聖観音菩薩立像だけ撮影できました。
会期後半(10月30日~)からトーハク史上初の試みで光背を取り外しているそう。仏像ファン急げ!ですね。グッズもいろいろあっておもしろかったです。
違う日の夜間開館にデュシャンに行ったのだけど、本館に……
こんなライトアップが!素敵でした。
噴水広場でも光をテーマにしたイベントをやっていたのでその一環かな。
中国写真紀行―日本人が撮った100年前の風景― 中国書画精華-名品の魅力- 東京国立博物館 2018.9
企画展をやっていないトーハクにいくのは初めてだ〜。 と台風が近づく中行ってきました。中国が好きなので観ておきたかったのです。
今からちょうど100年前の大正7年(1918)2月20日、東京帝国大学(とうきょうていこくだいがく、現・東京大学)で建築を研究していた関野貞(せきのただし)は、東京駅で300人もの人々に見送られながら、中国・インド・欧米等を周遊する、2カ年にも及ぶ調査旅行に出発しました。 この旅行で、関野が中国調査を行うのは3回目となります。調査地は、遼寧省、山西省、河北省、河南省、山東省、浙江省、江蘇省と広範囲に及び、調査対象は建築に限らず、美術、考古、金石と幅広いもので、各地で多くの写真を撮影しました。
(公式サイトより)
調査の行程を追いながらの関野貞が中国で撮影した写真の展示でした。建築の調査旅行なので、建物の写真ばかりでしたね。自分としては当時の風俗が見たいので人物や街の写真が見たかったな〜と。そんなことを思っていたら後期展示を見逃してしまったのですが、後期は南京や杭州、紹興、鎮江、そして天台山など、江南地方(長江流域及び以南)だった……。作品リスト見たら大雁塔もあったし……。後期、10月に入ってから企画展行ったので、見に行けばよかった……とちょっと後悔しました。
その後は、トーハクの通常展示を見たのですが、すごいボリューム。そして外国人のお客さんで混んでいた。
埴輪のコーナーで気に入ってしまった。
あと、本館をこんなにじっくり見たのももしかして初めてかも。しつらえがすごくよくて。やっぱり古い建物いいなあ。
没後50年 藤田嗣治展 東京都美術館 2018.9
藤田嗣治はいろんな美術館や展覧会で観るからおなじみなんだけど、まとまって観るのは初めてかも。史上最大級の大回顧展とのことです。
メインビジュアルになってるカフェの絵も素敵だし、グッズの猫のダイカットタオルも売り切れる前に!(と思いましたがグッズは潤沢にありました、慌てることなかった…)
印象に残った作品
「アネモネ」「バラ」
フジタの乳白色の世界は人物に限らずなんだなあと。静物画だと静謐な感じが際立ちます。
「砂の上で」
乳白色の裸婦ではこれが一番好きだった。構図がおもしろいし、肌と砂の質感の混じり具合もおもしろい。
「夏の漁村(房州太海)」
今までも沖縄とか朝鮮とかいろいろな場所の風景や風俗の絵描いている作品を観てきたけど、これはなんか特に好き。
「争闘(猫)」
猫の形相が凄まじい。
「人魚」
人魚の白と背景の漆黒の闇の対比とうろこの描写が美しくうすら怖い。
「私の夢」「マザリーヌ通り」「フルール河岸 ノートル=ダム大聖堂」
「ホテル・エドガー・キネ」「室内」「ビストロ」
どれも独特の色遣いが美しいなあと。
あと、戦争画も話題になっていましたが、以前、ヨコトリで戦後70年がテーマだったとき、横浜美術館で観ていて、当時の従軍画家という存在に関しても知っていたので目新しくはなかったのだけど。
この展覧会の関連番組でフジタが「日本にドラクロワ、ベラスケスのような戦争画の巨匠を産まなければならぬ」と言っていたのを知って、どの環境に生きていても画家としての挟持を持っていたのではないのかなあと心を揺さぶられました。戦後、その責任を引っ被らされてしまったわけですが。「絵描きは絵だけ描いてください。仲間喧嘩をしないでください」「日本画壇は早く国際水準に到達して下さい」この言葉を残して日本を去った画家の心境を思うと胸が痛いです。
ビーマイベイビー Mitsuo Shindo Retrospective 信藤三雄レトロスペクティブ 世田谷文学館 2018.9
90年代、購読していたデザイン雑誌にいつも特集されていて、かっこいいなあと思っていて、懐かしいなあと思って足を運んだ。実をいうと音楽に関してはあまりかっこいいのは居心地が悪いと捻くれてしまうタイプだったので、みんながみんなフリッパーズ・ギターとかコーネリアスとかかっこいいかっこいいって人気だったけど、当時の流行を追いかけることはできなかったなあ。ピチカート・ファイブは好きで持ってたけど。ま、音楽は好みが違ってしまえばしょうがないけど。ちなみに当時追っかけてたのは米米CLUBとオルケスタ・デ・ラ・ルスですから…ホーンセクションとパーカッション大好きなので。
CDジャケットやノベルティやポスターがぎっしり。記憶にしていたよりもあれも?これも?信藤さんだったのか〜!と驚くことしきり。一番びっくりしたのは大好きだったJITTERIN'JINNのアートワーク。これ、持ってた〜!好きだった〜!って懐かしく…。渋谷公会堂のライブ行ったなあ…高校生のとき…。CDはまだ持ってるけどね。さすがにノベルティとかライブのパンフとかはもうないかな。
書道家の一面は知らなかったので、書の作品は興味深く観ました。あと、映像作品もたっぷり楽しめて。世代的に小さいお子さんを連れている家族連れが多かったのだけど、 映像の前で、「あ、それは、ちょっと、観ちゃダメ」ってなっているお母さんたちが微笑ましかったです。
懐かしいジャケットやポスターたち、当時の空気感で溢れてるけど格好良くて全然古くない。でも今、世に出たら受け止められ方がまた違ってしまうような気がするものもある。 格好良さは不変でも人も世も移ろうものだからな。
↑個人的にツボだった懐かしのCDシングル。どれ持ってた?