旅の目的は主にアートです。

旅は日帰りも含みます。近くの美術館から遠くの美術館まで。観たいものは観たい!気ままな鑑賞日記です。

没後50年 藤田嗣治展 東京都美術館 2018.9

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藤田嗣治はいろんな美術館や展覧会で観るからおなじみなんだけど、まとまって観るのは初めてかも。史上最大級の大回顧展とのことです。

メインビジュアルになってるカフェの絵も素敵だし、グッズの猫のダイカットタオルも売り切れる前に!(と思いましたがグッズは潤沢にありました、慌てることなかった…)

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印象に残った作品

アネモネ」「バラ」

フジタの乳白色の世界は人物に限らずなんだなあと。静物画だと静謐な感じが際立ちます。

「砂の上で」

乳白色の裸婦ではこれが一番好きだった。構図がおもしろいし、肌と砂の質感の混じり具合もおもしろい。

「夏の漁村(房州太海)」

今までも沖縄とか朝鮮とかいろいろな場所の風景や風俗の絵描いている作品を観てきたけど、これはなんか特に好き。

「争闘(猫)」

猫の形相が凄まじい。

「人魚」

人魚の白と背景の漆黒の闇の対比とうろこの描写が美しくうすら怖い。

「私の夢」「マザリーヌ通り」「フルール河岸 ノートル=ダム大聖堂」

「ホテル・エドガー・キネ」「室内」「ビストロ」

どれも独特の色遣いが美しいなあと。

あと、戦争画も話題になっていましたが、以前、ヨコトリで戦後70年がテーマだったとき、横浜美術館で観ていて、当時の従軍画家という存在に関しても知っていたので目新しくはなかったのだけど。

この展覧会の関連番組でフジタが「日本にドラクロワ、ベラスケスのような戦争画の巨匠を産まなければならぬ」と言っていたのを知って、どの環境に生きていても画家としての挟持を持っていたのではないのかなあと心を揺さぶられました。戦後、その責任を引っ被らされてしまったわけですが。「絵描きは絵だけ描いてください。仲間喧嘩をしないでください」「日本画壇は早く国際水準に到達して下さい」この言葉を残して日本を去った画家の心境を思うと胸が痛いです。

ビーマイベイビー  Mitsuo Shindo Retrospective 信藤三雄レトロスペクティブ 世田谷文学館 2018.9

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90年代、購読していたデザイン雑誌にいつも特集されていて、かっこいいなあと思っていて、懐かしいなあと思って足を運んだ。実をいうと音楽に関してはあまりかっこいいのは居心地が悪いと捻くれてしまうタイプだったので、みんながみんなフリッパーズ・ギターとかコーネリアスとかかっこいいかっこいいって人気だったけど、当時の流行を追いかけることはできなかったなあ。ピチカート・ファイブは好きで持ってたけど。ま、音楽は好みが違ってしまえばしょうがないけど。ちなみに当時追っかけてたのは米米CLUBオルケスタ・デ・ラ・ルスですから…ホーンセクションとパーカッション大好きなので。

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CDジャケットやノベルティやポスターがぎっしり。記憶にしていたよりもあれも?これも?信藤さんだったのか〜!と驚くことしきり。一番びっくりしたのは大好きだったJITTERIN'JINNのアートワーク。これ、持ってた〜!好きだった〜!って懐かしく…。渋谷公会堂のライブ行ったなあ…高校生のとき…。CDはまだ持ってるけどね。さすがにノベルティとかライブのパンフとかはもうないかな。

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書道家の一面は知らなかったので、書の作品は興味深く観ました。あと、映像作品もたっぷり楽しめて。世代的に小さいお子さんを連れている家族連れが多かったのだけど、 映像の前で、「あ、それは、ちょっと、観ちゃダメ」ってなっているお母さんたちが微笑ましかったです。

懐かしいジャケットやポスターたち、当時の空気感で溢れてるけど格好良くて全然古くない。でも今、世に出たら受け止められ方がまた違ってしまうような気がするものもある。 格好良さは不変でも人も世も移ろうものだからな。

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↑個人的にツボだった懐かしのCDシングル。どれ持ってた?

ゴードン・マッタ=クラーク展 東京国立近代美術館 2018.8

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ゴードン・マッタ=クラークは1943年アメリカ生まれ。

アートのみならず、建築やストリートカルチャー、食など幅広い分野で多くの作品を生み出した。
とくに実際の建築物を分断する「ビルディング・カット」で広く知られ、都市に介入する姿勢を生涯貫いた。
78年に脾臓癌のため逝去。没後40年に当たる2018年に開催される本展はその生涯を彫刻や映像、写真、資料などによって多角的に紹介するもの。

(公式サイトより)


アジア初の回顧展だそうです。あまり詳しくはないので調べたところ、父はシュルレアリスムの画家で建築家、ロベルト・マッタで母親は画家のアナ・クラーク、名付け親は現代美術家マルセル・デュシャン。現代美術の申し子的な生まれ育ちの人ですね。

現代美術を鑑賞するときは、アーティストのプロフィールや時代背景などを調べて、できるだけ理解するよう努力しますが、だいたい、よくわからないな〜と思いつつ、自分がどう感じたか、で楽しむようにしています。

ゴードン・マッタ=クラークの作品で感じたのは、「体温」です。建築物や都市など人が介在するものがモチーフだからでしょうか。

彼の作品は物としては残っていないけれど、写真や資料で映像で過程も残っていて。その臨場感が伝わってくるような展示でした。いい出会いをしました。

サブタイトルの【Mutation in Space】
「Mutation」て何かしら?って調べたら、「突然変異」でした、なるほど。

印象に残った作品

「ツリーダンス」

「チャイナタウンの覗き見」

「クロックシャワー」

「オフィス・バロック

「日の終わり」

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「オフィス・バロック」模型越しの「日の終わり」映像

 

ゆらぎ ブリジット・ライリーの絵画 DIC川村記念美術館 2018.8

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昔、『週刊グレートアーティスト』という雑誌、というか毎週、1人のアーティストを取り上げた冊子が出て、100号発刊、全部集めてコレクションに!(専用ファイルも売ってたような…)いわゆるデアゴスティーニ的な。 最初は2冊創刊で安かった記憶…、ゴッホルノアールだったかな。ん?もしかしてデアゴスティーニの走りだったのかも?で、アートが好きだったのもあるけど、美大を目指していた高校生の私は勉強になるかも、とせっせと買ってました。好きなアーティストはもちろん、そうでなくても毎週せっせと。

で、100まで買ったかは覚えてないのですが結構最後の方まで買ってました。これで出会えて好きになったアーティストも結構多かったので、よかったな〜と思ってます。

ブリジット・ライリーもその中の1人。日本では38年ぶりの展覧会ということで、初めてその作品が観れる〜と興奮していってきました。そのタイトル通り、ゆらぎを感じるオプ・アートの作品の面々。広い空間を贅沢に使っていてよかったです。たまに吸い込まれそうになったりちょっと酔いそうになったり、とゆらいできました。近寄ってみると、微妙な線の幅の違いがわかったりして、とても綿密に計算されて描かれているのだなあと。

どの作品も魅力的でしたが、白い壁に溶け込んでいくような錯覚を覚えた「大滝2」が好きでした。

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DIC川村記念美術館は、ちょっと遠いけど庭園もきれいで広くてお散歩しがいがあって、日帰り旅行的な感覚で行けて大好きです。駅から無料送迎バスもあるので車に乗らない族の私にもやさしい。美術鑑賞の後は自然散策、時期的にお花は少なめだけど蝉時雨の中夏休み気分を味わえました。

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「TOPコレクション たのしむ、まなぶ」 「内藤正敏 異界出現」 「世界報道写真展2018」 東京都写真美術館 2018.7

恵比寿にある東京都写真美術館。昔、ガーデンプレイスができる前、線路際をてくてく歩いて向かう昔の写真美術館の時代から好きでした。あの頃は入場料も数百円だったなあなどと思い出しつつ、あれ?ただ、自分が学生だったからかな?と思ったり。1階の映画館でかかってる映画を観に行くのに、せっかくだから上と地下の美術館も回るか、と行ってきました。

入口に向かう途中、大好きな植田正治の写真が。

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3つの展覧会を回りました。

一番印象に残ったのが、「内藤正敏 異界出現」展

初期の「SF写真」化学反応で生まれる現象を接写したもので、(内藤さんは早稲田大学理工学部化学専攻)実際の作品と掲載された、雑誌、小説の表紙などの印刷物が展示されていて、60年代の作品なのでリアルタイムではないのだけど、図書館で見かけていたかも、子供のころに、なんて思いました。ハヤカワSF文庫とか置いてあったものね。ハインラインの『夏への扉』の表紙や安部公房小松左京の小説の表紙とかにもなってるのか〜。ちょっとおもしろいような気持ち悪いような、観ていると足下がぐらぐらする感じの作品。今ならデジタルでいくらでも作れるけど、アナログだもんな、すごいね、と思うような作品も数々。

その後、即身仏に出会い、民間信仰に傾倒するってのも極端ですごいですね。

即身仏」「恐山のイタコ」「遠野物語」「出羽三山」「東京」とテーマは違くてもその作品の持つ温度というか重さというか、印象が変わらないなあと思いました。ロウソクの炎のみで露光した作品なんかは、SF写真の過去があっての発想でもあるのかな?などと思ったり。

印象に残った作品

「キメラ」

なぜか、昔の映画、大林監督の『HOUSE』を思い出しました。

 出羽三山

即身仏堂 海向寺」

神々の異界

羽黒山

霧の森がまるで海中のよう。海の中にいるような錯覚を覚えます。

「鬼杉 英彦山

諏訪大社 上社前宮」

「恐山」一面のブルーがきれい。

民俗学者でもあるので著作も多く、ちょっと面白そう、機会があったら読んでみたい。

 

宮廷のコバルトブルー 景徳鎮明清官窯復刻展 日中友好会館美術館 2018.7

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昔、上海博物館で景徳鎮を観てからその美しさに虜になりました。機会があれば観に行くようにしています。東京国立博物館の東洋館なんかでも観れますかね。特に、ピンクの色が好きなのです。普通は、この展覧会のタイトル通り、青が有名かと思うのですけど。いつか、景徳鎮風、でいいから器欲しいなあ。

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日中友好会館美術館は昔、お隣の日中学院で中国語を習っていたので結構身近に感じています。ワンフロアのこじんまりとした美術館ですけど中国に関する興味深い展示が多くてとてもいいですよ。たまに下のホールも使った大掛かりな展示の時もありますね。

明清時代の作品を古の技法に忠実に一点一点、手作業で復刻した景徳鎮明清磁器。繊細で華麗な宮廷愛用品だそう。景徳鎮の詳しい説明(パネル展示とか)、映像も観れてのんびり鑑賞しました。 写真もいっぱい撮れて。しかしやっぱりいいピンクだなあ。 

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生誕260年記念 心のふるさと 良寛 永青文庫 2018.7

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一番好きな書は良寛さまの書です。おこがましいと思いつつも目標にしています。

そして、この展覧会、良寛さまの書をたっぷりと堪能できる貴重な機会だったのに、後期にギリギリ駆け込みました。前期を見逃していたのが悔やまれます。 個人蔵が多いのでまとめて公開されることが少ないんですよね。

初めて観たのは、2006年1月の東京国立博物館での「 書の至宝」展。貴重な、有名な書がたくさん観れたとても素晴らしい企画展で、そこで一番心奪われたのが良寛さまの書でした。たしか屏風。それ以来の憧れなのです。

後期は晩年(乙子神社時代と島崎神社時代)の作品が中心でした。懐素に影響を受けた草書はもちろん、朴訥とした楷書もたまりません。書簡がおもしろかったですね。いただきもののおいしいもののお礼のお手紙が多くて。ほのぼのしました。

図録はなかったのですが、良寛展特集の永青文庫雑誌と良寛遺墨集のチラシがあったので自分の学習用に購入することにしました。

江戸時代から戦後にかけて所在した広大な細川家の屋敷跡の一隅にある永青文庫。 現在の建物は旧細川侯爵家の家政所(事務所)として昭和初期に建設されたものだそうです。初めて行きましたが、素敵な建物で、好きな美術館の仲間入りだ!と思いました。帰りにサロンでお茶をいただきながら、「ん〜まさにノブレス・オブリージュ」と思ってしまう、建物、コレクションでした。 お庭の散策もしたかったのですが、暑さと、季節柄か蜂が怖くて、ちょっと見て退散しました。

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次の機会にのんびり。 江戸川公園から肥後細川庭園までの道も都会のオアシス的な、暑さを凌げるいい散歩道でした。